ワイルドカード枠 選考結果
カテゴリ: お知らせ
2024.12.9
中四国学生演劇祭 北海道学生演劇祭 大阪学生演劇祭 とうほく学生演劇祭 京都学生演劇祭 名古屋学生演劇祭 東京学生演劇祭 福岡学生演劇祭 2024
今年度、新たな試みとしてワイルドカード枠を新設しました。
追加で第10回全国学生演劇祭に選出する団体が決定しましたのでお知らせします。
=選考方法=
各地の学生演劇祭の運営に関わる者から1名ずつが選考委員となり(計8名)、ワイルドカード枠ノミネート団体の上演映像を視聴しました。
その後、選考委員全員で集まる場を設け、各地の賞について審査・選考基準を共有したのち、今回の選考基準を話し合いました。
=選考基準=
先駆性や社会性などの部分に重きを置き、新たな価値観に出会わせてくれそうな作品および団体
選考基準に照らし合わせ、選考委員それぞれが最も評価する自地域以外の団体に、選考理由とともに1票を投じました。
最も票を獲得した団体が第10回全国学生演劇祭の出場権を得ます。
※同票となった場合、日本学生演劇プラットフォーム代表理事の沢が最終選考を実施
選考理由
・北海道
選出団体:劇団ゆうそーど。(京都学生演劇祭 推薦)
選考理由:
いつの間にか始まっていて、ぬるっと終わっていくので、少なくとも劇的とは大きくかけ離れていますが、最も実験的かつ先駆性の高い作品でした。「伝えたい」が先行する演劇は圧倒的に多いですが、今作は「共有したい」が先行していると見受けました。 肩の力を抜いて、いつまでもぼんやりと眺めていられそうな、不思議な引力を感じます。 時間なんて無いとしたら、この劇空間にずっと浸かっていたいです。
北海道学生演劇祭 事務局 エノモトナルミ
・東北
選出団体:劇団激男(大阪学生演劇祭 推薦)
選考理由:
ワイルドカード枠の審査対象であった上演映像6本のうち、私が現地で観劇したかった!と思わずにはいられなかった作品は、劇団激男『黄ばみかけの完熟トマト、そこにちょっとのユートピア』である。 劇がはじまり、まず目に入ったのは男性4人の逞しい肉体。出オチか?などと安直に考えた自分を恥じたい。俳優たちが半裸になり、身体だけでなく自らの心までをも曝け出す43分間。この営みの、なんと美しいこと。 彼らが社会に向ける悲しみを多くの人に受け取ってほしい。画面越しでも感じられた莫大なエネルギーを、多くの人と同じ空間で体感したい。その願いから、私は劇団激男を推薦する。
とうほく学生演劇祭事務局 岡元優空
・東京
選出団体:劇団激男(大阪学生演劇祭 推薦)
選考理由:
男子校ノリのようなギャグには嫌悪感すら抱きましたが、ホモソーシャルが露悪的なまま舞台上に立ち上がることで自身の抱える属性やマチズモの蔓延を自己批判的に取り扱っていると感じました。
演出やテキストを通して上質で見やすい作品を目指す中で、個性や切実さが埋もれている団体が多い印象でしたが、彼らには残酷な世界を更地にしてしまいたくなる衝動、それでも演劇に組み上げる誠実な姿勢に、今やらなければならない切実さがあるように思います。現状の審査方法では勝ち上がりにくいであろう挑戦的な意欲作としてワイルドカードに相応しいと判断しました。
バブル崩壊前の日本の“豊かさ”を象徴する「おいしい生活」から始まり「近未来をぶっとばせ」に着地するなどのカルチャー造詣と社会への視座がどう化けるか、今後の創作が楽しみです。
東京学生演劇祭事務局 黒澤健
・名古屋
選出団体:劇団激男(大阪学生演劇祭 推薦)
選考理由:
1980年代が「恋愛至上主義」時代だとするならば現代は「表現至上主義」時代とも言えるだろう。誰でも自由に自己表現・自己発信できるユートピアでありながら、そこから見える世界はどこか灰色だ。自由は時に不自由を生む。理不尽に迫る。無意識に強要されていたと気付く。大人が演じるお遊戯会は露悪的だが、どこか切ない。平田オリザは著書(演劇入門)の中で「「伝えたいことなど何もない。でも表現したいことは山ほどあるのだ」と書いた。果たして、彼らに伝えたいことは何もないのか。是非、生で見て確かめてみたい。
名古屋学生演劇祭アドバイザー 平松隆之
京都
選出団体:23Hz(北海道学生演劇祭 推薦)
選考理由:
ドアを使って空間を使いこなしているところ、そのモチーフ一つで幅広い表現をするのがとても魅力的でした。また、役者の身体の使い方や照明、音響の一体感も良かったです。全体的に物語やその時の場面、人間関係などが理解しやすく、何気ない楽しげな会話が微笑ましいなとか、色んな感情に浸りながら見ていました。グッと引き込まれる素敵な劇でした。
京都学生演劇祭実行委員会 川﨑麻琳
大阪
選出団体:劇団ゆうそーど。(京都学生演劇祭 推薦)
選考理由:
最も評価した点は45分という短い時間の中で5つの日常の風景を完成させたことです。
それぞれ戯曲が異なる角度から人間関係を描きつつも、共通して「日常の中に潜む感情の変化」や「小さな悩みや葛藤」がテーマとなっており身近なもののように感じますが、そのリアリティは唯一無二であり、ぜひ全国の舞台で見たいと思い推薦いたしました。
大阪学生演劇祭実行委員会 塩路悠旅
中四国
選出団体:めいメイ(とうほく学生演劇祭 推薦)
選考理由:
幸せと過去の苦悩の描写を激しく行き来する役者の演技の差別化がはっきりしていて、見ていてメリハリのある劇に引き込まれました。行動や言葉のひとつひとつ、演出にも何かしらのメッセージが込められており、無駄なものを極限までそぎおとしたような美しさを感じました。 舞台演出、演技の双方において光と影、陰と陽を効果的に使っている劇だと感じました。
中四国学生演劇祭 寺本愛海
福岡
選出団体:23Hz(北海道学生演劇祭 推薦)
選考理由:
ワイルドカード候補として各地演劇祭から推薦された6つの団体。どの団体も素晴らしい作品でした。 中でも私が選出させていただいた23Hzさんは、リアルかつ緻密に人の脆さ・弱さを描いた脚本、舞台を存分に使って演劇でつくことができる嘘を信じた演出、美しく照らし鳴らすテクニカル、「先駆性や社会性などの部分に重きを置き、新たな価値観に出会わせてくれそうな作品および団体」という選考ポイント、なによりチャーミングな俳優たち、全てにおいて頭一つ抜けていたかと思います。1つ伸びしろ挙げるとするなら、特有のシーン転換等、演出家が持つ様々な意図や目標の共有が役者の身体のレベルで団体内で行われていたら、より団体として作品として強度が増していたのではないかと感じました。 選出の直前まで劇団激男さんと悩みました。「これでもくらえ!」と言わんばかりの暴力的かつ官能的な作品は良くも悪くも完成されており、全国の舞台で更なる成長を見ることができる気がするのは23Hzさんかと思いました。 今回、1団体が全国に出場することにはなりますが、ワイルドカード候補の全団体が魅力的であったことは間違いありません。またどこかで拝見できるのを楽しみにしております。
福岡学生演劇祭実行委員会 赤阪陸央
ワイルドカード選出団体は3票を獲得した、劇団激男(大阪学生演劇祭 推薦)に決定しました。