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レビュー

ふしこへ参加団体からの感想・講評

まず、役者の方がどの方向を向いていてもどの立ち位置でも台詞が最後まではっきりと 聞き取れることが印象的でした。基本的なことですが、映像作品は舞台で直接お客さんに見 てもらう時よりも集中が切れやすいと思うので情報がストレス無く伝わるというのはとて も大切なことだと思います。また 3 人の人間性や関係性が間の使い方や会話の空気感でわ かりすく表現されていて、短い時間でも話に入り込みやすく感じました。舞台上を和室のよ うに飾ることなく、黒一色の舞台に座布団など少しの小道具のみを置いているという点も、 表現されていない風景をお客さんが想像しながら重ねて見ることが出来るのでとても良い と思います。

■ポケット企画 関係者

 

呉服屋という設定もあり、まず衣装に惹かれました。それぞれのキャラクターに似合う着物姿でとても可愛らしかったです。話しながら着替えるシーンでは今で言う女子会の雰囲気が漂っていて、女性同士の会話を盗み聞きしているような気持ちになりました。 

旦那様がお狐様だったり、ピンクの女の子が決心をしたり、全体的に可愛くて優しい舞台だと思いました。話の構成も 20 分という少ない時間ながら綺麗にまとまっていて、見やす い劇でした。 

■東北連合 作・演出 茂木瑠那

 

楽しく見させていただきました。 

全体的に独特な雰囲気で、新鮮な気持ちで見ていました。特に始まり方、行灯が舞台に一つ置 かれた瞬間にぐっとつかまれた感じがありました。会話が徐々に近づいてきてそれに合わせて照 明がつくのも好きです。 

スピード感があるわけではないのに、流れるように時間が過ぎていくような感覚でした。 会話も、初めのほうと最後のほう、三人の時と二人の時では全然間の使い方とか話し方とかが 違ってリアルでした。 

衣裳もそれぞれの雰囲気を表していて素敵だと思います。画面越しで細かいところまで見られな かったのが残念です。しっかり生で見たかったです!

■ごじゃりまる。 衣装担当

 

統一された世界観、空気感が流れていて、劇全体として、異質で特別な印象を受けました。和服と洋服の混ざった衣装や551の紙袋が登場したところから、現実とは離れた世界であることが見て取れ、時代考証することなどを放棄して、世界観に没入することができました。また、3人のキャラクター性が、見た目や声質、話し方から感じ取れ、よくバランスが取れていると感じました。ただ、会話や反応が噛み合わず、自然会話として違和感を感じてしまう部分があったことが少し残念に思いました。

非常に個人的な意見ですが、最後の女将さんの衣装替えが、赤いベルトなどで差し色を入れるだけで、和服からの変化が際立ち、物語として大きな変化を表す印象的なシーンになったかもしれないなと思いました。

■劇団Noble 衣装小道具

 

今作の講評で、審査員の方々から作品中の違和感として「時代設定のちぐはぐさ」が取り上げられていました。

江戸時代の劇かな?と思ったら551買ってくるし。「バーゲンセール」「ビビった」など現代的な口語が聞こえるし。

ただ、個人的には全然ありかなと思っています。

時代設定がよく分かんなくても楽しめたので。確かに混乱するところもありましたけど。僕たちも劇を鑑賞する際には、「うわ、あの『アルプススタンドのはしの方』の役者さんやん!」とか「あの人の髪型好きやわぁ〜」などとごちゃごちゃ考えながら見てる訳で。ごちゃごちゃした複雑な心を台本にひっくり返したみたいで好きです。

大会としては精巧な造りの劇が好まれるのは必然ですが、そうでなくても評価されたらいいな〜と思った次第です。

 ■ゆとりユーティリティ

 

ふらっと始まりふわっと終わる。本当に日常の一コマを切り抜いたような演劇でした。

会話のテンポや間の取り方、返事が本当に自然でしっかり”世間話”をされていて実力の差を突きつけられたような衝撃です。

脚本の時代設定(?)に合わせてタイトルも右から読むようにできていたり、細かいところまで作りあげられているのがよくわかります。

となると、気になるのが劇中の「ヤバいな」や「そらキモいな」などの言葉遣いです。

正確な時代が劇中で明言されている訳ではないので、あえてそうしているのかどうかが少し気になりました。

■あたらよ 関係者

 

最初に行灯をセンターに置いた時に、その明かりと空気感で自然と作品の世界観に入ることができた。素舞台だからこそ生きる観客に想像させる演出が随所に観られて楽しかった。だからこそ、照明をもっと絞った方がより風景を観客側が作りやすいのではないかと感じた。

中盤はほとんど会話劇であったが、ここで衣装の着物がとても生きていると思った。洋服で横向きに座るとどうしても被写体が薄く奥行きがないように見えることがある(役者自身が真横を向かないようにすることも多いと思う)が着物であるが故に厚みや裾の動きが繊細に見えた。

個人的には着替えを見せるシーンが一番好きだったのだが、ここで一つ感じたのは見せ方の変化である。視点が大きくは変わらない会話劇から全員が後ろへ下がり、上手の方で着替えを行う演出に変わった時に、観劇ではなく、その空間を覗き見しているような感覚になった。演出一つでこのように表現できることに気づき、とても勉強になった。

■おちゃめインパクト 役者 郡谷