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レビュー

ごじゃりまる。の観劇レビュー

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沖縄県 田原雅之さん(劇団Theater TEN Company)

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 元気イッパイ躍動感溢れる舞台でした。とてもおもしろかったです。

 現代日本における負の社会構造と、深い闇を痛快軽快愉快に描き、愛と勇気と正義(?)のパワーで弱者を救っていくという勧善懲悪、定番のストーリー展開!!・・・かと思わせておいて(笑)

 

 脚本、演出、照明、音響、衣裳、小道具、振付すべてにおいて、しっかりしているなと感心しました。しかし、その巧さゆえに惜しいなと思う部分もありました。

 

 この題材は、限られた上演時間で描くには非常に大きな問題で、それを演劇作品として一時間に収めるべく、物語の完結、調和へと向かって猛スピードで突き進んでいきます。はて、この作劇は、まず表現(演出)ありきの物語構造なのか、物語があっての表現(演出)なのか・・・鶏と卵はどちらが先なのかは脚本を読んでいないので分かりませんが・・・登場人物の心情や状況が、ナレーションなど様式的演技と表現(演出)で流れてしまっているのでは、と感じました。SNSで流れていく呟きやタイムラインの文字列のように、感情移入しにくい膨大な情報の渦のようにです。

 

ふと。「色とりどりに変化する照明や、キレの良いダンスを、敢えて使わなかったらどのようになるだろうか?」ということを考えました。もし、そんな機会があれば、新たな演出でもぜひ観てみたいです。

 大変、考えさせられ、かつ楽しむことができました。どうもありがとうございました。

 

大阪府 KENSUSAKIさん(創造Street)

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音が楽しい。
使用楽曲はテクノ調でポップ。演出のスピード感と相まって見やすい構成だ。女性出演者が発する音も心地よさのあるテンポ感。出演者の持つ集中力と瞬発力が全体の根底に無いと音響と照明が浮いてしまいがちな演出手法だがそうなっていないのが素晴らしい。全体のスピード感は観客の脳内処理速度を一歩足りない所で置いていく。これがかなり効果的に感じる。脚本中に含められる時代性や言葉遊びだけでは無い、脚本の主軸だけを残して進んでいく。見終わった後に「全部が分かった訳じゃないけど面白かった」と落ち着くことが出来る。このよく分からなさは結構大切で、演劇が持つ余白が気持ちいいのよね。
メディアや社会、企業に対して作られた作品はとても多いし見飽きたジャンルでもあると思う。しかし、ここまで対比を綺麗に配置すると新鮮さを感じる。白玉とみたらし団子の白と黒、無垢な物と覆われた物、善人と悪役の対比が美しい。爽快なスピード感を持つシンプルなサクセスストーリーに見せかけて、終盤の一転は脚本の妙だ。時事ネタを盛り込むと作品強度は低くなる。その時はウケるかもしれないが、20年後にウケる可能性は低いだろう。シェイクスピア作品が100年ウケる作品強度があるのは人間の普遍性が主軸になっているからだと思う。「こうふく♡みたらしだんご」に描かれる人間の表裏は普遍的で一過性とのバランスで作品強度がましている。良いエンタメ作品だった。

 

秋田県 鎌田暁さん(THEボトルキープス)

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東京代表「ごじゃりまる。」さんを観劇させて頂きました。

荒唐無稽でパワフルなシチュエーション・演技演出テイストとは裏腹に、ブラック企業をモチーフとした社会風刺の効いたメッセージ性が強烈だし、「これぞ学生演劇」と感じました。
(詳しい内容の書評は私より優れたレビューがたくさんあるにつき、割愛します)

…私は地元の秋田県で社会人しながら、アマチュアとして現在、演劇活動をしている演劇人です。

首都圏に近い客層人数の環境で学生演劇を経験し、中央でプロを志向することもなく、現在、アマチュアのライフワークとして地元での演劇活動を大切にしている身分として思ったことを一つだけ。

「学生時代の若さ・パワー・勢い」っていうのは何よりも強力な武器ですね。 改めて、そう思わされた芝居でした。

中央には、関係者観客含めて、創作の自由度の高い環境がある。

反面、地方演劇は歴史的な地縁・人間関係の濃さ或いは人口の少なさに起縁する客層・人数の不自由さなどのデメリットが何処でも少なからず付きまとうと思います。

学生の皆さんが今後、中央でプロを目指すのか?或いはアマチュアとして、自分のいる土地でライフワークとして芝居を続けていくのか?
生き方や今後の芝居へのスタンスは今後、様々です。

ただ、東京という客層・集客人数が豊かな土地で、思いっきりパワフルに表現活動をした経験を誇りに思って欲しい。

若さと自由は最大の武器であり、経験です。

このコロナ禍の中で、パワフルな演劇活動をしている学生さんを観れたのが、同じ学生演劇出身者として、かなりの救いになりました。

これからも元気に活発に前向きに。

その無邪気さこそ、学生演劇の最大の魅力だと思います。

そんな事を感じさせてくれた芝居でした。ありがとう。