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企画

観劇レビュー 影山じろうさん

fukui

福井県 影山じろうさん(劇団福井自由舞台)

 

ふしこのレビュー

 

 タイトルが右から左に読ませる『木青屋服呉』。冒頭に登場する女性の『着物』。その女性が持って来る『行燈』。それらがひと時代昔を連想させ、この芝居は明治か大正か、少なくとも今の時代より昔であると思わせてくれた。スッとこの世界に入ることが出来たので、バツグンの導入でした。

 

 芝居の大部分は3人の女性による会話劇である。私は男性なので、世の女性・奥様は旦那の見ていないところでこんな会話をしているのかと感じた。なんだか見てはいけない世界を見ているようで、むず痒いような恥ずかしいような、それでいてもっと見たくなるような気分にさせられた。

 いや、ジェンダーフリーがうたわれる昨今において、女性が男性がという発言は野暮というもの。となれば性別は関係なく、家族が家族以外の存在(例えば友達)に見せる別の顔が出ているのであろう。すると私の妻は友達の前でこんな風に笑うのか、知らなかった、と普段は見られない顔を見ているようで、やはりむず痒いような恥ずかしいような、それでいてもっと見たいと思わされた。

 

 別の顔という意味でラストに驚きの展開がやって来る。女将の裏の顔が垣間見えてくるのだが、その表情に悲壮感はなくむしろ晴れやかに見える。今まで旦那のために尽くしてきた表の顔も、秘密を抱えている裏の顔も、どちらも女将のありのままの姿であるのだろう。表も裏も考えず、自分の気持ちに正直に生きることが健全であると、私は感じた。健全に生きて行こうと思います。

 

 ラストシーンで、女将が種明かしとなるセリフをすぐに言ってしまうのだが、もう少し無言の時間を長くしても良かったと思う。セリフのない間を作ることで「何を撫でているんだろう」と観客に考えてもらうことで、より芝居にのめり込ませることが出来たはず。そこはもったいなかった。

 また、終盤の着替えのシーンで、女性二人が女将の着替えを手伝うのだが、スッと奥に移動し着物を手に取り、流れるような動きで美しかった。しかし日常生活において、3人しかいない部屋で着物を使って目隠しをすることはまず無いし、取引先のご婦人が着替えを手伝うこともなかなか無いと思うので、私は違和感を覚えてしまった。それくらいなら和風のついたてや屏風を用意してそこに隠れれば良かったと思う。そうすればご婦人は手前に座ったまま、二人が奥、一人が手前で舞台の奥行きを使った演技が展開でき、芝居に深みが出せたはず。