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レビュー

劇団Nobleへ参加団体からの感想・講評

 

“そもそも自分の人生の行く末は本当に自分が決定づけているのか“この作品にはそんな 一貫したテーマがあった。タイトルの「灯火」はアイデンティティを意味するのであろう。 それが一体どんなものかを確かめるように登場人物の二人は好きだったものや故郷、あそびなど、理屈っぽくない自分を思い出す。宇宙も無のゆらぎの中から始まったように自己を 決定付ける何かに出会うには途方もない時間がかかる。その中で、もがき苦しんでいたら季節は死んでいった。過去の自分を見直すことで現在の自分を確かめられる。シンプルで難解 なテーマを、そのまま表現したような演劇だった。むずかしぃ〜!

■ポケット企画 サンペイリュウタ

 

抽象舞台だ!と思いワクワクしながら見始めました。役者双方の身体への繊細な意識、聞き取りやすい声、身体がダイブするような格好いい場転……。 

ただ、最終的な感想としては「何に関心を持って見ればいいのか」分からなかったです。 動きが多いため表情の変化が捉えづらいこと(むしろ背中を見せる演出が多かったように思います)、お話が行ったり来たりしているために役の内面の変化が捉えづらいこと、などが理由です。僕個人としては、「とにかく見栄えが良いらしい作品」という印象にとどまりました。

■東北連合 役者 長谷川歩己

 

身体表現や文学作品、様々な要素が組み合わさった、引き込まれる作品でした。照明の色数が 少なく、表面的には黒と白、というより、光と影の二色で進んでいく演出だったように感じました が、役者さんの語りが、観てる側をさらに深い情景まで連れて行ってくれるように感じました。劇 中に登場するそれぞれの文学作品をもっとよく知っていれば、さらに面白く見れるのかなと、自分 の教養のなさを反省しています(笑)自分の団体ではきっとやることがないような、落ち着きの中に もエネルギー渦巻く作品でした。もうすぐ春ですね。

■ごじゃりまる。広報担当 

音響照明と役者の合わせがよく凝られていて,素舞台上で二人だけの役者の作る世界が上手く 彩られているなと思いました.特に上手と下手の奥にあるフットライトが素敵でした.ただ,全体と して少しお話が分かりにくい時間が長かったです.具体的には,文学作品の比喩が多いため,それらが本筋の世界線とどう関係しているのか,何の例えなのかもう少し直接的であると見やすく なると思いました.

■ごじゃりまる。 舞台監督

 

この作品は始まりから終わりまでのすべてのシーンがシームレスに繋がっていて、その中でだんだんと作品の輪郭が見えてきます。それは座組の全員が正しく作品の世界観と目標地点を共有できていたからだと思います。

特筆したいのが、音響の細やかさです。演劇は大抵、劇場で行われているに過ぎないパフォーマンスに過ぎませんが、最初の音から電車のSEが入る部分の変化の美しさやボリューム感で一気に遥か遠い世界に飛ばされました。

飛ばしたあとは持続するのが大変ですが、終わりまで継続されていたのは、やはり照明と役者の力強さだと考えます。

同じ方向を向いているからこそ、ベクトルが掛け合わさり、力強いのだろうなと思いました。

あと、作家の方の編集力、すごいです。

■ゆとりユーティリティ

 

現代版”人間讃歌”とでも言うべきか、というのが私の第一印象である。

オクムラ・スズモリの回顧録のようなシーンを挟みつつも、舞台・役者は黒一色と個性がなく抽象的で匿名性が高い。役者2人が他の役も兼ねてやる上での配慮なのだろうか。

またこの作品の役者はよく動く。その身体表現の多くは物語とリンクしている。一見物語とは無縁に見えるアリゴリズム体操も然りである。それは『繰り返し』である。同じことを繰り返す日々と一定の動きをループするアリゴリズム体操、まるで機械のように正確な『繰り返し』

最後に、私がこの作品を現代版人間讃歌だと思う理由について。

そもそも人間讃歌が人間らしさを肯定・賛美する諸思想として使われることが多いならば、この表現は違うのではないかと思われるかもしれない。

しかし、だからこその現代版なのである。

明日に夢や希望を持つわけでもなく、現実に打ちひしがれ、何もかも手探りな様が実に今の人間らしい。

そう考えれば脚本中にでてきた『人虎伝』や『銀河鉄道の夜』はいずれも自他を書いたものであり、そこの2つが選ばれたのも納得がいくような気がする。

■あたらよ 関係者

 

硬質な文語調の語りや、引用、雑多な会話が羅列されていて、様々な質感が雑居したコラージュのようでした。春や別れの寂寥感が確かにそこにあるのにそれを敢えて埋もれさせているところに、どことなく卑屈さを感じました。描かれた風景に手触りを感じる隙を与えず、無情なほど足早に過ぎていく時間の流れに取り残される感覚が、この季節の残酷さと重なって、なんとも言えぬ余韻に胸が締め付けられました。

■ふしこ 役者

 

すごく文学的で、小説の一遍を読んでいるようでした。

様々な時間、場面を一つの空間上に表現するのは抽象性が強みの演劇ならではのものであ

ると思いました。この手の脚本・演出は、切り替えをいかに上手く見せるかが鍵となると考えてますが、nobleさんは音・照・役者の動きをピッタシとはめ、すごくきれいに切り替えていると思いました。

また、前後左右広く舞台を使い、役者の動きも様々で、見てて飽きない演出になっていたと思います。役者さんの「静と動」の切り替えがとてもきれいで、そこに合わせる音照さんとともに稽古量を感じられました。

改善点として感じたのは、まずは音量が小さいことです。(声量の話ではありません)映像でお客さんが見る以上編集が必要かと思いました。また、意図してのことだと思いますが、後ろ向きや、顔の見せない演出が多く、ただでさえ映像で情報量が少ない中、表情まで隠されると何を見れば良いのだろうか、と思いました。(映像だと表情はどっちにしろ見えにくいので、そこも加味した上での演出でしたら、面白い試みだとも思いました)

最後、暗転等を挟まずにお辞儀をされてましたが、何かしら切り替えが欲しいと思いました。切り替えを入れないにしても、もっと余韻を残しても良いのでは、、と思いました。

■おちゃめインパクト 音響 高野