JSTF

企画

観劇レビュー 石川直幸さん

niigata

新潟県 石川直幸さん(劇団@nDANTE)

 

ポケット企画のレビュー

 

まずは、コロナ過での上演を敢行した全ての団体と実行委員の方々に、最大限の敬意を払いたい。また、コロナという危機に際し、迂闊にも(笑)全国の演劇人とつながってしまった私のような片田舎の人間に、観劇の機会を与えてくれたことに感謝申し上げます。以下レビューです。
序盤、私はこの作品の面白がり方に苦慮した。しきりに時間がないことをほのめかす女学生と、へその緒に妄執する女学生。段々と二人の置かれた状況はわかっては来るのだが、いつの間にか二人の会話は詩的なモノローグ地味た言葉の浮かべ合いへと変容し、時間がない事への拘泥や、へその緒の話は途中でどっかにいってしまう。いわゆるドラマの核となるこの二人の目的(そして揺らされるべき価値観)が掴めぬままで、作品のどこに心を預けて観劇すればいいのかわからなかった。
もしも残り20分もこの調子であったなら、「うだうだインドアでポエミーなこと考えてないで一回太陽に向かって全力疾走してこい!以上!」で感想を終えるのだが、中盤以降の演出により思わず「おッ」と声が出た。(声を出しても迷惑がかからないのが配信公演のいいところかもしれない。)悩みながら歩み続ける自分の足跡から、自己の存在を再認識するこの手法は、文字どおりの『鮮やかな』青春の表現描写であり、恐らく単音/和音/音階にまで意図があるだろう生演奏と相俟って美しい。これは一種の発明である。演劇において発明することはそれだけで偉業である。またこれによって、前半の浮遊感が、彼女らの迷い・戸惑いによるもの、という意味を帯びて、作品全体が少しソリッドになったように感じられる。
ブルーシートはブルーシートでなければならなかったのか、舞台美術のペンキがそこにあることへの登場人物の意識の持ち方など、細かい気になることをあげれば枚挙にいとまがないが、これからも見るものを圧倒的する総合芸術たる作品を、ポケットに入れるがごとく鮮やかに運用して頑張ってください。公演お疲れ様でした。