JSTF

企画

審査員講評 七味まゆ味 氏

七味まゆ味さん

総評

全体的には、世界が終わったり、始まったり、神様の存在だったり、生や死だったり…、どこか観念的だが、それが今の彼らのリアルなんだろうと思われた作品が多かったように思いました。みずみずしい舞台も、熟成された舞台も、それぞれに良さがあり、大変刺激を受けました。どんな題材でも演劇として成立するし許されるからこそ、今何を選択し、どの角度から切り込み、どうこだわり、どう遊ぶのか、が、とても大事だと思ったし、また興味深く拝見しました。素敵な時間を、ありがとうございました。

せっかく観劇させて頂いたので、打ち上げでは可能な限り、各カンパニー様に声を掛けさせて頂き、感想を伝えました。

コメントはその時に伝えたこととほぼ同じ内容ですが、文字数の関係と、私の拙い文章力があいまって、ぶっきらぼうな表現になっている箇所も多々ありますが、どうぞご容赦ください。

 

 

A-1 劇団宴夢

とにかくパワフルで全力で遊び心満載だったのだが、観ていて巻き込まれるというよりは、一歩外側から客観視できてしまうものだった。それは、舞台上に予測不能のものがなく、安全だったからではないかと思う。観客としては、もっと驚かせて欲しいと思った。例えば、何回か繰り返されたツッコミとして殴るテンポが、吟味した上でのテンポに思えず、安易に安全に感じられ、笑いに結びつかなかった。全体的にはもっと「くだらなさ」を追求できると思った。ラスト、パンをとるまでのところ、とことん時間をかけたら、よりくだらなさは増したように思う。そここそがあっさりしていてもったいなかった。小松役が、声も芝居も可愛いかった。

 

A-2 フライハイトプロジェクト

幕が上がる前の空気の作り方から素敵だった。そういうこだわりが、芝居の質を高めていて、最初から最後まで、丁寧に作り込まれていて好感が持てる。ただその分、感情や構成の起伏が見えにくく、単調だったとも言える。心が動かされるインパクトにはかけると思った。日常の芝居はナチュラルに演じられていて俳優のレベルは高かったのだが、そこに本当にリアリティがあったのかどうかは疑いたいところだ。リアルな人間は、もっと声を荒げるものだと思ってしまった。その静かで淡々とした作風が意図だとすると、作風に対して、なかなか人間味が見えてこない難しさがあったように思う。ナチュラルさではなく、もっと役者本人の人間味、人間性が垣間見れるようなリアルさがあったら、作品としては泣けたように思う。全部が丁寧なぶん、どこを大事にしてるかがわかりにくくなってしまう。

 

A-3 元気の極み

リアルな自分達のまわりのことを話していて、例えば生きる事だとか死ぬ事だとか演劇のことだとかを、真摯に愛を持って考えている思考に触れられて、とても好感が持てた。ただ、役者本人から、自分のことの話をしてるようになかなか見えて来なかったのが、吸引力の弱さになってしまったように思う。例えば、自分の言葉(京都なら京都の方言など)で話すほうが、伝わったんじゃないかと思った。それは、自分の中からちゃんと出てる言葉にするために、という意味で。もちろん、標準語を使っても良いのだけれど、よりリアルを感じたかった、という意味では、標準語はベストではなかったように思った。印象的だったのは、「私は、演劇が好きです」の時の笑顔。あれは、とても良かった。心からの言葉だったし、本物だったと思う。なんとも可愛らしかった。

 

A-4 楽一楽座

観客を巻き込む・のせるのが上手で、たくさん笑わせてもらった。坊主ラップあたりは特にウキウキさせられた。ただ、ラストに向けての展開が昇華できてないように思えた。裸踊りを見て、主人公が爆笑する流れに、嘘臭さを感じてしまった。こじつけで付け足したように見えてしまった。例えば、爆笑しない終わり方も考えられたんじゃないかと思ったり、全体的にコント要素とシリアス要素のバランスが良くなかったから無理矢理終わらせた感があったのかなと思ったりした。役者は目一杯遊び心があって良かった。だが、ツッコミ役の台詞が少し甘い。聞こえない台詞があると、観客のストレスが増えてしまうので、もったいなく感じた。

 

 

B-1 ヲサガリ

稽古の足りてなさが目についてしまい、残念ながら演劇として楽しめなかった。舞台の上に乗るのは、役者以外の何者でも無いのだということを改めて感じた。俳優には、自信満々に舞台に立っていて欲しい。内容的にも、思い切りやり切れなくては生きてこない作品だと思った。最後のオタ芸には、心からの情熱とパワフルさが欲しかった。演出的にはたくさん面白い要素があったと思った。ただやはり、観客の目に触れるのは、紛れもなく俳優なのだ。俳優が、その空間を引き受けないと、背負わないとならない。本や演出を凌駕して、そこに立っていてくれないとならない。

 

B-2 喜劇のヒロイン

独特で大変面白かった。摩訶不思議な小説を観ているようだった。テンポの良さに引き込まれる。だからこそ、俳優が噛んでしまうのはもったいなかった。テンポが崩れると面白さが損なわれる。緊張感が欲しかった、もしくは緊張のし過ぎで噛んでしまうのなら、それを凌駕する精神力が、今後、必要になってくるのだろう。華のある、遊び心のある、いい意味で、抜けたかんじの役者陣たちが揃っていて、とてもバランスが良かった。個性豊かで、楽しかった。舞台の使い方も面白い。また観たいと思うカンパニーだった。何より観客は、彼らに魅せられていたと思う。

 

B-3 砂漠の黒ネコ企画

演劇としてではなく、読んで面白い作品だと思ってしまったのが残念だった。「ゴドーを待ちながら」のようなモチーフ、スタイルは、素敵だと思ったが、観客を惹きつける演技力、演出力としては、弱く感じた。流れる空気がゆっくりなのは味だと思ったが、その空気に根気よく付き合える観客は少なかったように思う。集中して観ないとわからない作品だったのが、難しいところだ。また、工夫されていた衣装や美術も空間とマッチしていなかったように思った。戯曲としては、世界観が徹底されていなかったのがもったいないと思った。固有名詞を出していたのはあえてなのか、その根拠がわからず、モヤモヤした。現実世界とリンクさせているのか、させていないのかが曖昧だったので、どちらかに徹底してこそ生きる作品なのではないかと思った。

 

 

C-1 三桜OG劇団ブルーマー

高校生みたいな若々しさがあった。じゅうぶん若々しいのだが、女子高特有のノリがあって楽しかった。メンバーのチームワークが素敵で、このまま5年後、10年後、20年後も、もしかしたら同じ女子高生のノリのまま、同じ芝居をしてるのではないかと思わせるような瑞々しさと勢いと、可愛らしさや華があった。やり切ってるのに、面白さとチャーミングさが同居していて好感が持てる。音楽の使い方やダンスの入れ方など、このカンパニーならではの色を感じた。少し空間が広過ぎて感じられたところがあった。幕を狭められたら、もっとキュッと見れたかも。オープニングがとても良かった。心臓の鼓動のような、規則正しい生への衝動のような動きに、ワクワクさせられた。テーマが明確でわかりやすい。内容も刹那的な切なさが、彼女達にとても似合っていた。

 

C-2 LPOCH

衣装が素敵に見えなかった。黒いマスクは、衣装の一部なのかそうでないのか、呼吸も苦しそうで、声も聞こえにくくなってしまって、観客のストレスになってしまっていた。そこに強い演出意図があったとしても、それ以上にストレスが大きく、なかなか集中できなかった。全体的には、生きづらい辛さを叫んでいた印象が残るが、カーテンコールでの作者の素直な強い気持ちが1番伝わってきたことに、演劇の難しさを覚える。カーテンコールの言葉で、ではなく、私達は、お芝居で、観客の心に残る演劇を作らないとならない。伝えたい思い、強い気持ちは理解はできるのだが、「事象」を伝えるだけでは、共感を求めたり観客の心を捉える演劇にはなりづらいのだろうと思う。

 

C-3 はねるつみき

ハッキリとしたテーマが一見見えづらく、一見散漫しているように見えても、そこに現代社会や今の世界や作者の意思が強く現れていて、しっかりと引き込まれた。役者の演技もとてもスムーズで、それぞれがパスをうまく回していて、作者の世界観をよく捉えて伝えており、とても心地よかった。女のコたちはとても可愛く魅力的で、男のコは丁度良いカッコよさと優しさと胡散臭さがあって素敵だった。全てにおいて、熱がないように感じたところが、虚しさを際立たせた。しかしもしかしたら、ほんの少しの情熱が感じられたほうが、より心が囚われたかもと思った。女のまわりをカミ様がまわっていくシーンの熱量が、ほんの少し落ち着いて見えてしまった一瞬があって、そこだけ、ほんの少しだけ恥ずかしさを感じたので。全体的には、とてもテンポよく、とてもまとまりがあり、しっかりと練られた作品だった。