JSTF

企画

観劇レビュー 神田真直さん

kyoto

京都府 神田真直さん(劇団なかゆび)

 

東北連合のレビュー

 

 かなり久しぶりに学生の演劇を観劇しました。本作では、学生にとって切実な問題が愚直に、わかりやすく描き込まれています。どんなものに対する悪口も、簡単に見つけることができるようになった昨今です。学生≒若者は、出会うものすべては否定可能であることを知り、信じ抜くことができません。そんな学生≒若者の行き着く先には孤独しかない。そういう現実を本作は突きつけるものです。
 現代を舞台にした、リアリティのある長いドラマは描きにくくなっています。別役実はある年の岸田國士戯曲賞の講評で、このことについて「情報としての世界が広がり、状況が重複しあい、ひとつのドラマが他と相殺されがちで無化する傾向にあること、さらには、ドラマの形造るべき対人間関係が、地域共同体、家族共同体の崩壊により、構造として確かめ難くなったこと、などによるもの」と述べています。本作は、ひょんなことから新しい人間関係が構築され、新しいドラマが生まれるように見えますが、すぐにそれを諦めてしまう、今の学生≒若者が孤独に陥る過程そのものであるように思いました。それは30分という短い尺で描くのにとても適していると思いました。それと同時に、この30分で描き切れてしまうほど、学生≒若者の生活には拡がりがないのではないかとも思いました。
 学生≒若者としつこく言いました。本来は、学生も若者ももっと多様な存在です。しかし社会は明らかに、学生を若者というカテゴリーに押し込み、わかりやすい存在であることを求めてきます。男が働き、女は家庭に入るみたいな形の幸福以外の幸福を想像する豊かさがこの社会にあるかは疑問です。このように私もまた、この社会を信じられないでいることから、本作の内容を自分自身のことと捉えなおしてみたりしています。
 私たちは、誰も知らないパーソナリティのこの先をどう描くのか、ということをこれから問題にしなければなりません。それは演劇を続けなくても、生活そのものとして向き合わなければならなくなるでしょう。いい意味でとても悲しい気持ちになりました。