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企画

観劇レビュー 玉井江吏香さん

ehime

愛媛県 玉井江吏香さん(Unit out)

 

ゆとりユーティリティのレビュー

 

非常に魅力的な、破天荒な、力のある創作作品に出会えたことを嬉しく思う。

 社会人として奮闘中のヤマダの右手がサメのぬいぐるみ化してしまい、さらにそのぬいぐるみは野球選手で阪神シャークスのサメジマ(こういった、言葉の小ネタはたくさんちりばめられていて、ちょいちょいくすっと笑えた)で・・・という、割とよくある、イマジナリーフレンドとの対峙で心の声の悲喜こもごもと向き合っていく話なのかな、と思いきや(もちろんそうでない訳ではないけれど)、作品中カリカチュアとして描かれる社会の在りようや人たちが、「一人の世界」を越えたところで圧倒的な力をもって展開していること、つまり作家の外側に世界がある事をとてもクールに認識されていて、とはいえ、デストロイ、とタイトルにうたうほどの熱も込められており、その俯瞰と泣き笑いと熱さのミクスチャーが、なんとも落ち着かない気分にさせる面白い作品だった。

 主人公以外の10人以上の登場人物たちも、カリカチュアとしての身体として分かり易く描かれていて、かつ飽きさせない力技。途中、周囲のアクティングスペース外から投げかけられる声、賞賛やあるいは剥き出しの悪意、といったものも、現在、という時間軸の中で意識せざるを得ない「見えざる大きな場所」を想起させられ、ああそうだよね、としみじみ共感した。そして、同時にこの作品が団体作品であることが垣間見えて嬉しくなった。

深刻ぶった作品にしない姿勢には共感しかないが、「いつも通り負ければいいだけ」「上手に負ける」「楽しもうや」「俺がついてるやん」、心のやわらかいところへ届く台詞も多く、「どこまでも聞こえる声で叫ぶから」のシーンでは、二回見て二回とも泣いた。

9回二死満塁からの、サメジマの逆転ホームランが、何を「デストロイ」し、何に「さよなら」だったのか、余韻の中で、今も考えている。