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観劇レポート 観劇オバケさん

カテゴリ: 全国学生演劇祭開催後の劇評

2018.3.16

第3回全国学生演劇祭の演目を観劇し、舞台の模様を広く伝える”劇評/レビュー”を書いていただく方を募集しレポートを書いていただきました。

 

観劇オバケさん

2014年から小劇場を中心に観劇を重ねています(4年連続100公演以上観劇,3年連続200公演以上観劇)。2016年からは学生劇団,2017年後半からは専門学校の公演にも足を運んでいます。過去に演劇をした経験は全くなく演劇についてはズブの素人です。数年前まで自分が芝居にここまでハマると思ってなかったですし。ただもともと物語を読むのが好きだったので今は芝居を観て物語を楽しんでいるといった感じです。「物語が好き」と先に書きましたが,文学作品で言うなら芥川賞系の作品よりも直木賞系の作品の方が好きなので演劇作品でも大衆小説作品的な作品の方が好みです。特に不条理系・抽象系は苦手なので最近は観るのを意識的に避けています。また短編や中編はキレがないと面白くないと思いますしどちらかというと長編の方が好みの作品が多い印象です。普段,良いと感じる作品は直感的に思うのですが敢えて言葉にしてみると,

①脚本が良い(ストーリーがうまくできていて欠陥があまり無いと私が感じる、共感できるetc.)。

②演出〔になるのかな。。〕に関してはテンポが良い、間を上手く使っている。配役がばっちりハマっている。

③役者の台詞回しが良い。私は台詞回しが好きみたい。あと声質。

④発声や滑舌。やはり台詞が聞き取りにくいと話が追えないのでストレスを感じます。

⑤価格対満足度もありますよね。一時期高級料理店に行くのがマイブームだったのですが高い金出して旨いのは当たり前なわけで(笑)またサービス料取られるのにそれほどサービスっていうほどサービスしてもらってないよな~、とか思って最近は安くて旨い、というのにハマっていますが演劇も同じことで。別に有名人好きなわけでもないし(笑)

⑥その時の体調とか気分。観た順番なんかにも左右されるんじゃないかなぁ。

 

という感じですかね(笑)かなり公演を観ているもののドンクサい方なので「わかってないなぁ」とか「アホやなぁ」とか「浅い観方やなぁ」とか思われたりするかもしれません。特に題名と作品内容の関係を理解するのが苦手な方だと自覚してます(苦笑)

 

 

≪はじめに≫

今回,観劇レポートを書くにあたって断っておきたいことが一つあります。募集要項には「演劇祭の作品を観劇し、舞台の模様を広く伝える“劇評/レビュー“を書いていただける方を募集します。」とありますが私は演劇論など学んだこともないですし劇評(批評)なんていう偉そうなものはできないし,する気もさらさらありません。募集要項には観劇「レポーター」や「レポート」という言葉もあります。レビューは①評論。批評。書評。(『大辞林第三版』)のことですがレポーター【reporter】〔リポーターとも〕は①報告者。②連絡係。③テレビ・新聞などで、取材をし、その内容を伝える担当者。(『大辞林第三版』)とあり,レポート【report】は(名)スル〔リポートとも〕①研究・調査の報告書。学術研究報告書。②新聞・雑誌・放送などで、現地からの状況などを報告すること。また、その報告。レポ。「現地から-する」(『大辞林第三版』)のことです。募集要項にも「『第3回全国学生演劇祭』の作品について、各200字程度で観劇レポートを書いていただきます。」とあるので「レポーター」や「レポート」の文字どおり,私はあくまで観劇好きな一観客の目線での現地(劇場)からの報告という形を取って書くつもりでいます。神田氏の言われるような「愚かな客(無教養な観客)」になってしまうかもしれませんが知ったかぶらずにわからないことは「わからない」と書く所存です。

 

 

 

観た順番に

 

[Bブロック](2018年2月23日10時30分~上演時間約150分)

 

〇ヲサガリ(京都工芸繊維大学)

『ヲサガリの卒業制作』京都学生演劇祭推薦(京都学生演劇祭賞受賞)

あるアイドルグループのコンサート会場でメンバーのリョウが卒業発表をする場面から作品は始まる。そしてコンサート後のリョウファンのオフ会。大学院生のオカダ(岡田眞太郎),唯一の社会人で東京から遠征している30歳のユリ(葛川友理),女の子と話すのが苦手だったが友達に誘われてアイドルコンサートに行ってから女の子と話せるようになり,今はユリの仲立ちもあってサオリという彼女がいる30歳のヤマシタ(山下耕平)。オカダの同級生でヤマシタのコンビニのバイトの先輩だった現在大学6回生のイシダ(石田達拡)。ドラマーのオガワ(小川晶弘)。もともとそのアイドルグループのオノミサという娘の推しだった点も〔全員ではなかったかもしれないがほぼ〕一致しているみたいだ。先に書いた各人の経歴のようなものは本人もしくは他の役者が前に出て話すという形式で進められていく。もちろん全員が参加しての会話場面もある。「僕が応援した娘は卒業する」みたいな台詞を言っていた人もいたな(笑)最後はリョウの卒業コンサートで5人が応援する場面で終わる。

 

この日がこの劇団初登場の上,朝一番だったせいか出だしは発声や滑舌が良くないと感じたが後半は良くなった印象。最後のオカダがバック転したり,ユリがジャグリングしたりするなど全員がヲタ声をあげながらアイドルリョウの卒業を応援するヲタ芸シーンが中々(笑)アイドルリョウは最後まで出てこない。あくまでリョウファン5人のみが描かれている。【作品紹介】に「早く大人になりたいと思っていた。ら、すぐになった。人気者になりたいと思っていた。けど、なれぬと気づいた。自分の才能を信じていた。のに、信じられなくなった。居心地のいいこの場所に、長く居すぎたかもしれない。」とあるように,モラトリアムの期間を生きる大学生や大学院生,もしくは30歳になり何者にもなれなかった彼らがアイドルを応援することに人生の意義を見出していく,もしくは何者にもなれなかった自分たちの果たせなかった夢をアイドルに仮託している作品という理解で良いのかな。。と書いたがそんな小難しいことを考えながら観ていたわけではない。私も縁があって昨年国民的アイドルグループのコンサート会場に3回足を運んだ(アイドルのコンサートに行ったのは人生で初めて)が40代,50代の男性ファンの姿が目立つ。作品中の彼らの年齢からするとちょっと早いような気がするが40代以上の男性で若い子(娘)の頑張っている姿を応援したい,という人は多いようだ。出演者の中にアイドルヲタの方はやはるのかな?学生劇団なんだ,と思っていたのだが小川晶弘さんなどは結構京都の小劇場界で活躍されている役者さんですよね。綱澤氏や於保氏,両新美氏がレポートにあげられている5人がラインをする場面などを中心として結構ウケていたように思う。『ヲサガリの卒業制作』という題名はアイドルリョウがアイドルを卒業するにあたって応援するヲタ芸を作ったことを指しているということでいいのでしょうね。

 

 

〇喜劇のヒロイン(日本大学)

『べっぴんさん、1億飛ばして』東京学生演劇祭推薦(実行委員部門大賞受賞)

カナダ(新美惠子氏は「アメリカ」と書かれている。私の記憶違い?)に留学していたカオリが帰国。探偵のマナブに依頼するところから物語は始まる。留学中のカオリのもとに家族の写真が送られてきたのだが2年前の写真と比べると弟のダイゴロウ〔の顔〕が別人になっている(入れ替わったダイゴロウは「メシまだ~?」「猫がいい」しか言わない)。帰国したカオリがそのことを母のユキエや妹のシマに指摘しても2人とも逆に「カオリがおかしい」と言う。だから「本物のダイゴロウを探してほしい」というのがカオリの依頼なのだが,そのうち探偵マナブが長期出張中の父親になり代わってしまったり,あげくのはてには飼い犬のポチが猫のタマになってしまう。シマはポチがタマになった段階でようやくおかしいと思ってくれるがユキエは相変わらずわかっているのにわかろうとしないのか本当にわかってないのか態度は変わらない。カオリはダイゴロウを探して商店街に行ってコンビニで働いたりティッシュ配りのアルバイトをしているダイゴロウに似ている人物を訪ねたり,カオリが直面している上に書いた状況とそっくりな作品を発表して文学賞を受賞したべっぴん三太郎というダイゴロウそっくりな人物に会ったりする。その合間にカナダ時代の彼氏?マイケルが日本に追っかけて来たり。。

 

まずは苦情から(笑)意図があるなら仕方ないですがキャスト(配役)の名前は劇中登場人物で書いてもらいたい。後からどの役をどの方が演じているのかわからない。作品についてふれると,会話のテンポが良くて観やすかった。役者さんの能力も劇団としての魅せる能力も高いと思います。シマ役の方が関西小劇場で活躍されている女性役者N・Kさんに「容姿も声質も雰囲気も似てるなぁ」と思って観ていました。また全作品を読んではいないので詳しくないのですがカフカ的な作品だな,というのが直観的な印象。『べっぴんさん、1億飛ばして』という題名と内容との関係性はわからなかった。

 

 

〇砂漠の黒ネコ企画(九州大学ほか)

『ぼくら、また、屋根のない中庭で』福岡学生演劇祭推薦(大賞/俳優賞受賞)

胸に草が生えている男(以下,「胸男」と書く)がベンチに座っている。そこに足に草が生えている男(以下,「足男」と書く)が杖を突いてやってくる。ベンチに座って「メダルを探しているが見なかったか?」と。胸男「見なかった」と答えるが,足男は「ここしかないはずだ」と言いはり,胸男が座っていた場所に挟まっていたメダルを見つける。メダルは町内のマラソンでとった銀のメダルだそうだ。しかしこの後足男は「メダルは自分のじゃない」と言ったり胸男に「メダルをあげる」と言ったり〔したような〕。胸男が〔確か〕メダルを投げ捨てるとちょうどそこに来た眼に草女(宮地桃子。以下,「眼女」と書く)がメダルを踏んでしまう。足男は眼女が自分のメダルを踏んでいることを咎める。眼女は眼を治してもらいに先生の所に行く。眼女が出てくる。眼が治っているが怒っている,というかパニクっ(混乱し)てヒステリック(錯乱状態)になってる感じ。曰く「見えていたものが見えなくなった」(この台詞は何となくは覚えているが明確に覚えていたわけではなく於保氏のレポートを参考にした)と。眼女が去った後,足男は胸男に「メダルを返して」と言う。この後も続きますが想い出せない。。すみません。

 

まずは苦情から(笑)重ねて書くが,意図があるなら仕方ないですがキャスト(配役)の名前は劇中登場人物で書いてもらいたい。後からどの役をどの方が演じているのかわからない。基本的には静かな劇で淡々と進んでいきます。時折,爆発シーンがある。しっかりと作品は作られている感じ。ただ観た順番が悪かったかなぁ。。朝から観劇の上,3番目の上演。疲れてきているし静かな部分が多いと眠気も誘ってきますから。。なおかつ直前に観た喜劇のヒロイン『べっぴんさん、1億飛ばして』の評価が個人的に高かったので。。「何を伝えたいのかなぁ」と思って観ていて最後は集中力がキレたかな。。胸に草が生えている男がどこが悪いのか最後までわからなかった。心臓なのか心(気持ち)なのか。う~ん。【作品紹介】にも「落としものを探す足の悪い男、目の悪い女、そしてもうひとり男がやってきた。」としかないし。。もう少しわかりやすくすれば作品としての大衆支持率も上がると思うし面白い作品になる要素は秘めていると思いますけどね。私は観ていませんが『シャニダールの花』という映画(予告は観ている)を想起しました。『ぼくら、また、屋根のない中庭で』という題名と内容との関係性はわからず。。

 

 

 

 

[Cブロック](2018年2月23日14時30分~上演時間約150分)

 

〇三桜OG劇団ブルーマー(仙台三桜高校演劇部OG)

『スペース.オブ.スペース』とうほく学生演劇祭推薦(大賞/観客賞/俳優賞受賞)

出だしはぐっさん(千石菫)・ガイ(熊谷美咲)・ノッチ(鈴木綾乃)・パルコ(相田千遥)の4人の女の子が〔合宿所を思わすような〕布団など敷いた散らかった部屋の中でジェンガのようなゲームをしている。〔確か〕パルコはチキンのようで中々ブロックを積めない―結構ここは時間を使っている―他の娘が「別に人生ゲームとかオセロで決着つけてもよいんだよ」とか「不戦敗でいい?」と言ってようやく置いたと思ったら,その瞬間にわざと崩す。この勝負は人数分に1個足りないスーパーカップアイスを誰が食べるかの勝負だったようだ。結局は分けあって食べたりしているのだが(笑)U(高畑希)が先に書いた状況の途中に風呂から戻って1人増えて5人になっている。アオバという隕石が落ちて地球が滅びる最後の日だそうで元地学部の女の子達が隕石を観測しつつここ数日一緒に暮らしているのかな。。「ミヤタ先輩に告白した」という話や『アルマゲドン』や『インデペンデンス・デイ』といった隕石が地球に落ちることや異星人が地球に襲来してくることを描いた映画のDVDを視たりしているようだ。レポートが明日までに提出なんだけど「地球滅びるからいっか」とかDVD返し忘れて延滞料金取られるけど「明日来ないからいっか」みたいな話をしたり。大統領の演説のマネをしていた娘もいたな(笑)時折隕石を観測する場面が描かれる。

 

世界最後の日のはずなのだがダラダラとした生活が描かれる。どう着地するんだろう?と思っているうちに集中力がキレたかも。。私は寝オチだと思ったんですが,於保氏や新美博康氏のリポートによると火鉢(新美博康氏によると七輪)があったそうですね。観逃していた。。新美惠子氏の書かれている「オープニングの心臓の鼓動を思わせるようなパフォーマンス」や於保氏の言われる「しかし、結末に近づくにつれて、時折みせる不気味で、不可解な表現に気がつきます。演劇の最初、音楽にのせて、肩を不気味に上下させるシーンがあります。」は覚えているんですが。。火鉢(七輪)を観逃したせいか繋がらなかったですね。『スペース.オブ.スペース』という題名と内容との関係性はやはりわからず。。「スペースコンマオブコンマスペース」なんですよね。。

 

 

〇LPOCH(京都教育大学)

『溺れる』京都学生演劇祭推薦(審査員特別賞受賞)

小学校の先生をしている油野(生きて届かない乳酸菌)は子供のころ人とうまく話せなかった。蛯名(田浦佑海)という女の子が転校してきて隣の席になる。蛯名とは普通に話すことができた。油野がシロツメクサのネックレスの編み方を蛯名に教わってきたときに乾電池が飛んできて油野の頭にあたり油野は頭から血を流す。油野が病院へ行った時も蛯名は詳しい状況を見ていなかったのだが油野の代わりに説明をする。次の日油野は医者に行ったため2限目から登校。教室に入ることが中々できない。蛯名が内側からドアを開けて迎え入れる。油野夢から覚める。この日偶然13年ぶりに蛯名と再会。蛯名は土建屋で働いてる。蛯名は油野が小学校の先生になっていると知って「油野学級か~。すごいね。」と。上記の中にオランダ出身のアメリカの絵本作家レオ・レオニ作の絵本『スイミー』の文章を油野が朗読する場面が時折挿入される(小学校の授業中?)。油野には常にユノ(青倉玲依)が守護霊のようにつきまとっている。時折油野は息苦しそうな顔をする。言葉が出てこない感じ。最後は蛯名が「私が話してばっかりだね。今度は私が聞くね。」と言う。油野は「僕が学校の先生になったのは僕みたいな子を救うため」で了だったはず。カーテンコールの時に場面緘黙症という症状のことが簡単に説明される。

 

当日パンフレットと一緒に場面緘黙症と緘動(かんどう)について書かれた封筒が附いていました。封筒の中の説明書?によると,場面緘黙症とは「ある特定の場面や状況で話すことができなくなる精神疾患」。緘動とは「極度の緊張のまま身体がフリーズする。動きが鈍くなったり、全く動けなくなってしまうケースも」あるとのこと。個人差はある(原文は「人それぞれですので、全員が全員上記の通りとは言えませんが。」とある)との但し書きはありますが。。場面緘黙症の例としては「親や家族には口達者。でも,学校では全く話さない」というものがよく挙げられるらしく。。「少しでも、少しでも多くの方に『場面緘黙症・緘動』という特性を知ってもらいたく演劇というフィールドを使用し、伝達を行いました。これをきっかけに、油野のような人が世の中にいるんだなぁ,と感じていただいたり、興味関心等抱いてくださりますと幸いです」とのこと。私自身午前中に医者などに行って学校に遅れた時に教室に入るのに勇気がいったり,普段ペラペラ話しているくせに肝心なことは言えないところがあったりしたのでその辺は共感できましたね。。ただ観てる途中はずっと「ユノは何なんだろう?」と思ってました。言葉が思うように出てこないことを「溺れる」と表現したのだろうが観劇中はちょっとわかりにくいと感じたかな。。最後の場面で〔確か〕油野がユノをドケるような場面があったはずですがそこで漸くわかった感じ。何で主人公の苗字を「油野」にしたんだろう?油は水に浮くからかな?というのは考えすぎ?(笑)『スイミー』が挿入されるのは,兄弟がみんな赤い魚だったのに,スイミーだけが真っ黒な小魚だったことが自分だけ他人と違う,疎外感があることが油野と重なるからでしょうね。そしてスイミーが自分自身の居場所を見つけたように油野も最後は自分の居場所を見つけた,という理解でいいのかな。。

 

 

〇はねるつみき(岐阜大学ほか)

『昨日を0とした場合の明後日』名古屋学生演劇祭推薦(大賞/観客賞/審査員賞受賞)

稽古場のようなところに男が1人と女が2人。そこに女が入ってくる。入って来た女が「何かおかしくない?」と言うがみんな無視してる。入って来た女はしつこく何回か言い「何で無視するのよ」と絡んでいく。絡まれた人間は「アタシに言ってたんだ」みたいな返しをしている。そして全員が徐々に衣類を脱ぎ散らかしていく。

(転換)

二人の人間が生き残った。幸いにも男と女。生命を生み出すことができる。生命を作り二人の子孫は「カミ」と呼ばれた。あるところ。ハラダトモカとヨコチンと呼ばれているハルカが「ディスティニーランド行った?」とか「今のこの星の人間は最初の二人から分かれたんだから全員神の子孫じゃね?」とか話している。トモカ・ハルカはデモに行こうとする。男(山本慶)が「デモに行くの?」と声をかけてくる。「デモなんて行くなよ」と。トモカ・ハルカは男に取り合わずデモに行く。トモカはボルダリングで18階建てのカミの住まいに侵入。トモカもカミも二人とも18歳ということがわかり意気投合。その頃ハルカは男に声をかけられ誘われて男の部屋について行った。男の部屋を出るときに男は「俺達付き合ってるよね?」「え?」「付き合ってないなら何で俺の部屋来たの?」と。ハルカは今いる彼を振って付き合うことに。男は「デモなんて行くなよ。みっともないよ。毎日僕の勤め先から君がデモをしている姿を見ていた」と言う。原田は神千可という名のカミのところへ。数年前に行われた神千可が神に就任する式典で千可は4歳の時に父親が殺されたことを明かし「私もいつか殺される。」と発言する。トモカはハルカをデモに誘うがハルカは断る。ハルカは「男に翌日フラれた」と。しかしまた男に「付き合って」と告白される。なぜか男の言いなりになってしまうハルカ。そんなハルカに憤るトモカ。神千可は自分の彼氏とトモカをシェルターに送りウルトラスーパーミサイルを発射する。世界は滅びる。

(転換)

場面が最初の稽古場らしき場所に戻る。脱ぎ散らかしていた衣類を着ていく。女が「何かおかしくない?」と言っているのはこの場面が前にもあったよね,ということ。そしてまた70億年前と同じ歴史が繰り返される。2回だけではなくこの星では同じ歴史が何度も繰り返されている。

 

まずは苦情から(笑)重ね重ね書くが,意図があるなら仕方ないですがキャスト(配役)の名前は劇中登場人物で書いてもらいたい。後からどの役をどの方が演じているのかわかりにくい。観終わった後に想起したのは手塚治虫の『火の鳥 未来編』。「ディスティニーランド」というのが会話で出てきたはずだが直訳すれば「運命の土地」。ディズニーランドのパロディなのはわかるのですが内容のことも考えて「ディスティニーランド」としたのかな?新美博康氏が「脱ぎ捨てられた服を着てまた脱ぐように、僕たちは人類創生の頃から、同じ歴史を繰り返しているんだろうか。」と書かれていたのには「なるほどなぁ」と。『昨日を0とした場合の明後日』という題名と内容との関係性はわかるようなわからないような。。昨日が終わって(リセットされて)明後日は加算(プラス)されるのかされないのか。仮に乗算するなら0に何をかけてもずっと0。何も変わらない。。ということ?

 

 

 

[Aブロック](2018年2月23日18時30分~上演時間約170分)

 

〇劇団宴夢(酪農学園大学)

『熱血!パン食い競走部』札幌学生対校演劇祭推薦(最優秀賞/審査員賞/一般審査賞受賞)

出だしはパン食い競走部のエース梶原(梶原正樹)が吊ってあるメロンパンに届かないところから始まる。すっかり意気消沈して諦めてしまう梶原。そんな梶原に熱血指導を行う監督(高橋永人)。部員は東北からパン食い競走が盛んな北海道(北海道でも梶原と小松の2人しかしていない)にわざわざやってきた小松(松田弥生)とマネージャー(阿部七菜子)。そして先生を殴ってペナルティで入部させられている森本(森本周平)。森本はあまりのくだらなさに「やってられるか」と一度その場を去るが監督は「必ず帰ってくる」と予言。なぜなら監督が森本から財布を盗っていたから(笑)帰ってきた森本は財布を返してもらおうと監督を殴ろうとするが「殴ればまたペナルティだ」の監督の言葉にやむなく入部を受け入れる。監督の熱血指導は「パン食い競走部たる者,米を食べるな」と食生活にまで及ぶ。梶原と森本は苦しみ悩みながらも手に持っている大きな握り飯を地面に置くが,穀倉地帯東北地方出身の小松は肯んぜず逃走する。結局ぐるぐる巻きにされて連れ戻されるのであるが(笑)監督は「最後の〔愛情を込めた気合い入れの〕パンチだ」と言って梶原を殴る。監督のその想いと部員たちの応援を背中に受けて梶原は最後にメロンパンに届くのであった。しかしその感動的なシーンの後,無情にも「翌日パンくい競走部は廃部」とナレーションが流れる。これがオチ。教育委員会などが廃部を決めたと言ってたはず(笑)

 

観ている途中「審査委員賞は取れない内容だな」と思った(笑)ストレートすぎる(笑)前の上演劇団との転換中に主にスポ根アニメの主題歌が流れており,雰囲気は1970年代(昭和40年代~昭和50年代)のスポ根アニメや熱血教師ものの感じでした。上演中も結構ウケてましたね。私の周りの客も「これはわかりやすいな」「こういうなんもないとな」と上演後に話したはりましたし(笑)出演者全員太く眉を書いて田舎っぺな感じも出したはりました。北海道民は公演中おもしろくても笑わないと北海道の劇団の方に聞いたことがありますがこの作品はどうだったんでしょうね?主人公の梶原の名前は漫画『巨人の星』や『あしたのジョー』の原作者の梶原一騎から?他の部員の名前も何か意味があるのだろうか?

 

 

〇フライハイトプロジェクト(早稲田大学、東京藝術大学ほか)

『今夜、あなたが眠れるように。』東京学生演劇祭推薦(審査員部門大賞受賞)

舞台美術は中央にベッド。ベッドを囲んで四隅に椅子。時の経過や緊急性を表しているのかベッドの周りを全員が走る場面が何度かある。出だしは「余命一年」「十月十日」という言葉から始まる。ゆり子(谷生彩菜)と母の八重(増田野々花),ゆり子の夫のたかひろ(前田達之介),由里子とたかひろの娘わか葉(椎木優海)の物語。時系列というわけではなく断片的なシーンが演じられ徐々に物語が繋がっていく。ゆり子は母八重との母子家庭で育つ。ゆり子は八重に迷惑をかけまいと国立大学に進学し卒業。社会人となる。その後交際しているたかひろを家に連れてきて八重に紹介,ゆり子はたかひろと結婚する。しばらくしてわか葉が生まれる。わか葉が小学生の頃,たかひろの一家は八重の家に同居することになる。わか葉は転校することになった。機嫌よく学校に行っていたわか葉がしばらくして学校に行かなくなる。ゆり子が無理やり行かそうとしてわか葉と溝ができたみたい。それ以来,わか葉はずっと母親のゆり子と寝ていたが祖母の八重と寝るようになる。八重が倒れて入院。お見舞いに行くゆり子とわか葉。最後は八重が亡くなる。

 

転換の際に開演が遅れた。遅れてきた客待ちだったみたいでイラッとしていたのだが舞台上に出て来て四隅に座って待機している役者さん達の佇まいを見ていると「これは良くなるな」と感じたことを覚えている。【作品紹介】には「八重から産まれたゆり子。ゆり子から産まれたわか葉。三代にわたる、女性の姿。物語は八重の最期の日を描き出す。時間とともに変化していくこと。時が経っても変わらないこと。母から子へ、繋いでいく想いとは。」とあるが「そんな大げさなものではない」とは思った。ただもう少し時間を延ばしてわか葉が学校に行かなくなった理由などエピソードを追加すれば長編作品としてそれなりにおもしろい作品にはなりそう。「余命一年」「十月十日」という台詞などが被っているが八重が死んだと同時にわか葉が生まれたと誤解されないかな?とは最後の場面で思いましたね。一瞬混乱したというか。〔確か〕八重が言った「わか葉とゆり子は似てる。」という台詞が妙に記憶に残っています。ゆり子(谷生彩菜)役とたかひろ(前田達之介)役の方の配役が合ってると感じました。神田氏の言われるような『あゆみ』のパロディとは思わなかったな。。オリジナルの『あゆみ』を観ていないので何とも言えないですが。。(私が観たのは2015年5月31日(日)の劇団しようよ『あゆみ』と2016年4月23日(土)に観た同志社小劇場の『あゆみ 長編ver』。劇団しようよのは走ってるというより舞台をぐるぐる歩いてたのが記憶に残っている)私が過去に観た作品では2月7日(日)に『大大阪舞台博覧会』で観た南河内番外一座「ヤング」『父帰る』に似てましたね(走るところが)。

 

 

〇元気の極み(大阪府立大学×大阪大学×神戸大学)

『せかいのはじめ』大阪短編学生演劇祭推薦(最優秀賞/スタッフ賞/観客投票MVP賞/審査員MVP賞受賞)

中尾多福の一人芝居。客席から登場。中尾が演じるのははじめという女の子。兄が母親の胎内で死んだため兄につけられるはずだったはじめという名前が妹につけられた。生まれる前に父が死んでしまった(これは観劇後に記したメモにあったが記憶が今はない)。はじめの誕生日(一歳のかな?)のお祝いをしているが「おれはまだ眠いんだ」と言ったり。中尾が自分自身を演じる場面っぽいこところがあったりはじめの話と現実の話が交わったりしている。また堀口大学『メーテルリンクの青い鳥』や太田省吾『更地』,ハイナー・ミュラーの『ハムレットマシーン』などの戯曲の台詞がその時々に合った台詞として中尾の口から語られる。映像をかなり使ってました。

 

「説明読んでいてもよくわからない」と上演前に周りで話しているお客さんがいた。確かに【作品紹介】の「ここ、ロームシアター京都は2016年にリニューアルオープンしたそうです。私は1998年に生まれました。この演劇祭は今年で第3回目だそうです。……いつか終わりは来るのかな。私はこの劇場で、この演劇祭で、演劇をする。わたしはそうして生まれ、そうして死ぬ。せかいのはじめ。」を見ても何をやるのかわからないですよね?(笑)大阪短編学生演劇祭の時はロームシアターではなくてシアトリカル應典院だったらしい。やはり上演した会場をネタにしてはるんですね。少し長かったかな。。20分くらいの方がスッキリ観れたかも。ちょっと後半飽きた感じ。。脚本/演出の中村奏太氏のTwitterに「全国学生演劇祭、全団体観ました。参加側ですが、個人的に好きだったのはフライハイトプロジェクトと喜劇のヒロイン。・・・単純に、今回僕が泣いたところと笑ったところです。」とあったり「その作品の深いところを見たり、価値を発見したりするところまで、じっくりと観劇出来る力はなかったので、直感的にというか、心も身体もまかせてその世界に浸ることができたのが、この二団体でした。スマートめなのが良かったのかな。」と書かれていたので今回の参加劇団の中では私の評価の高かった劇団と好みが同じなんですが御自身が脚本/演出される時にはわかりにくいものを作られるな,とおかしかったです(笑)役者の中尾さんは存在感ありましたね。劇団六風館を観に行く楽しみができた。

 

 

〇楽一楽座(徳島大学)

『Say!Cheese!!』四国学生演劇祭推薦(第1位獲得)

作品の中に劇中劇が私の勘定では八作品(お互いが繋がっているものもある)も出てくるという煩雑さ(笑)登場人物の名前だけでも覚えるのが大変(笑)出だしは戦場もの。クレージーファンタジーミヅキ(小笹優歩)の名前がやたら覚えている(リョウスケ隊長とかもいた気が。。)。5分くらいで〔確か〕全員死ぬのかな。。で,これが劇中作品でこの後まだ脚本を書けていないと脚本家が言う。劇団コペルニクスの公演なのだが脚本家は御祖母ちゃん子らしくて他の男性劇団員が責め立てると隠れてしまう。「劇団員が裸踊りしたら出てくる」とか言っている。で,この後脚本家は

①卒塔婆背負って「吐瀉物南無阿弥陀仏」と葬式でラップを歌うお坊さんの話。

②性欲について。サタンを呼び出すんだったかな?「エロイムエッサイム」と唱える話。

③バンドをしている2人の男と1人の女。男2人とも女のことが好きみたい。女は片方の男が好き。それがわかった好かれていない方の男が好かれている男に走り去った「〔女を〕追えよ!」と言う青春バンド物語。

④グランドマザーという星を被っている女性が登場。被ってる星が〔確か〕爆発した話。

⑤バンドのコンサート。リーダーカンタが新バンド名を発表。「マシカク」と。そこにメンバーのヒナコとミヅキが自分たちの結婚を発表。ミヅキには新しい命が宿っている,という話。

⑥セイテン(このメモが思い出せない)僧シュンカイを仏は「シャンハイ」と呼び間違える。蜘蛛の糸の話。

と書き上げて劇団員達に「飯食いに行こう」と言う。真面目な男性劇団員は「待てよ!このままやるのか?真剣な部分も入れよう」と。それを拒否する脚本家。実は脚本家の御祖母ちゃんが亡くなっていた。「御祖母ちゃんが笑えるものを作りたかったんだ」と言う脚本家。裸踊りをする真面目な劇団員。で,この後

⑦人生拷問中,とメモってるのでもう一芝居してるんですよね(笑)最後は最初の戦場芝居に戻ってリーダータケシがクレイジーファンタジーにペンダントを託す。「あなたがいない世界でもこの子の名前はタケシ」と言って終了だったはず。

 

出だしに若干,滑舌悪くて何を言っているか聞き取りにくいところがあったかな。。【団体紹介】の「劇団マシカク」や「月刊コペルニクス」を劇中に使っていましたね。『Say!Cheese!!』はカメラを撮る時の「はいチーズ!!」という意味。。狭い意味では御祖母ちゃんに「笑って!!」ほしい,広い意味では観客の皆さん「作品を見て笑って!!」という意味で良いのかな?

 

 

 

 

 

≪総括≫

神田氏が「全作品を観終わって、どうやら現代の学生たちのなかには『世界を終わらせたい』という欲望が潜んでいるように思えた。」と書かれていたので思い出したのだが「終末を感じさせるモチーフが多いなぁ」と感じた時があった。どこの時点で思ったのかな?たぶん[Cブロック] のはねるつみき『昨日を0とした場合の明後日』を観終わったときかな?「よく似てるモチーフが多いな」と。あと,綱澤氏が書かれていたので私が誤解していたことに気がついたのですが最初三桜OG劇団ブルーマー『スペース.オブ.スペース』の隕石の青葉とフライハイトプロジェクト『今夜、あなたが眠れるように。』の娘わか葉をどっちもワカバと思っていて「被ってるやん」と(笑)後述しますが激烈な腰痛の上,各公演中の合間にメモをしたものを参考に書いているのですが記憶違いも幾つかあるかもしれません。失礼があったらお許しを。ご指摘いただければありがたいです。

 

役者については,演技がやはりまだ若いな,と思うこともありました。特に滑舌や発声,もしくは台詞を言う時に聞かせたい台詞が流れてしまってるということを感じましたね。もちろん,皆さん上手いのですが上には上がやはりますしより上位の役者と比較するとそういうところがあったかな,と。偉そうにすみません。

 

観客賞順位(得点)は

 

1 喜劇のヒロイン4.37

2 フライハイトプロジェクト4.19

3 LPOCH3.94

4 ヲサガリ3.85

5 はねるつみき3.84

 

だったんですね。私は最初から5をつけないことを決めていて,フライハイトプロジェクト『今夜、あなたが眠れるように。』と喜劇のヒロイン『べっぴんさん、1億飛ばして』だけが4点(フライハイトプロジェクト『今夜、あなたが眠れるように。』の方が個人的には総合的に好みでした。ただ神田氏が「題材がありふれたものである場合、提示の方法を魅力的なものにしなければならない。しかし、提示の方法もたとえば演出によって(『意図的に』という意味で)役者の個性が死んでいて、長くは耐えられない。同じような場面を少しずつ変化させていくが、その変化は我侭な観客の眼を惹くほどのものではなかっただろう。」と書かれているのも「なるほど」と納得),それ以外の劇団は3点をつけました。期せずして(私は上演前に基本劇団の情報やあらすじなどは読まないし読んだとしても忘れるようにしている)東京の劇団が4,それ以外の劇団は3になりました。以前,観劇好きの方と話していた時に「東京の劇団はどこもスゴイい(しっかりしたものを作っているという意味)が関西は一部の劇団だけでしょう」と言われていたのを思い出しました。少なくとも私の感覚に総合的にあったのは東京の二劇団でした。3位と4位に京都の劇団が入っているのは地元票もあるのかもしれない(失礼な言い方になっていたらすみません)。

 

結局観客が思うことは同じなのかもしれない。わかりにくい話よりもわかりやすい話の方が好きなんですよね。でもわかりやす過ぎるとやや不満が残る。自分が共感できるものや若干ヒネりがきいていて「やられた」と思わせる作品に人気が集まるような気がします。

 

以上,『第3回全国学生演劇祭』会場のロームシアター京都 ノースホールからの報告でした(笑)

 

あらためまして参加劇団,スタッフの方々お疲れ様でした。そして観劇させていただきありがとうございました。拙いレポートですが読んでいただいたり参考にしていただければ幸いです。

 

最後に私事ですが。。観劇前日に激烈な腰痛に襲われ,キャンセルしようかと思ったのですが何とか全作品観劇することができました。座席にフワフワのシートのようなものが敷いてあって助かりました。また,しばらく腰痛が続いたため長時間着席することができずレポート提出が遅れたことをお詫びいたします。事務局の沢大洋氏,並びにスタッフの皆さんをお待たせして御手数おかけすることになっているかもしれません。あらためてお詫び申し上げます。