観劇レポート 新美惠子さん
カテゴリ: 全国学生演劇祭開催後の劇評
2018.3.5
第3回全国学生演劇祭の演目を観劇し、舞台の模様を広く伝える”劇評/レビュー”を書いていただく方を募集しレポートを書いていただきました。
新美 惠子(ニイミ ケイコ)さん
三重県
特定非営利活動法人 むうの木
理事長 新美 惠子
法人内にて、「劇団 むう」に於いても、代表を務める。
“設立趣旨/私たちは、演劇活動を通じて創造性や道徳心を育み、人と人とのコミュニケーションを大切にし、豊かな心を育てる事を目的とします。
この度は、演劇レポートをさせて頂きありがとうございました。
厚かましくも色々書かせてもらいましたが、本当に楽しかったです。
私のレビューが、少しでも学生演劇界のお役に立てますように。
C block1
Name 三桜OG 劇団ブルーマー
Title スペース・オブ・スペース
レビュー
今回一発目の観劇でした。
C、Bと最終組まで観て、帰りに心に強く残ってたのは、この作品でした。
採点では 4ランクを付けてしまいましたが、今更ですが5ランクをあげたいです。
先ずは、オープニングの心臓の鼓動を思わせるようなパフォーマンスは、今から何が始まるのか!という、観客までものドキドキ感がありました。
そして、直ぐに何処ででもある様な女子会トーク、ギャップが良かったです。
ぐっさん、ガイ、ノッチ、Uコ、パルコ、ひとりひとりのキャラもシッカリ立ってるので、入り込みやすかったです。欲を言えば、ダンスとか歌とかのシーンを少し減らして、女子会トークで一、二度は爆笑をとれたら、最後の寂しさがもっと増して、涙が誘えたのではと思いました。でも、ラストへの持っていき方良かったです。
惑星アオバの激突は現実なのか、一酸化炭素中毒集団自殺する為に創りあげた妄想なのか、謎のまま終わったけど、そのあたりは私の好きな終わり方でした。拍手。
C block2
Name LPOCH
Title 溺れる
レビュー
場面緘黙症という障害のことを初めて知りました。
大体の人は心あたりのある感覚なのでは無いでしょうか。
しかし残念ながら、私は持ち合わせていない感覚だったので、始めの方はしっくり来ませんでした。でも、お芝居と“水の音”が組み合わされることで、ストーリーが進むにつれて、湯野の苦しみが伝わってきました。これは、演劇という生の舞台でしか伝え難いモノでは無いかと思いました。青倉玲依さんが体験された事だから、この表現方法を思いついたのでしょうね。素晴らしいと思います。
湯野役の方も、演技がとても良かったです。蛯名役の方も、キャラがしっかりしていました。湯野と蛯名の正反対キャラがしっかり際立っていました。
衣装もスイミーというイメージも付いた設定と色でわかりやすかったです。
設定が判り易いと、より深く内容に入っていけます。その点では素晴らしく良かったです。
自分の障害の経験は、後に出会う人の力になって行く!
素敵なラストの表現でした。拍手。
C block3
Name はねるつみき
Title 昨日を0とした場合の明後日
レビュー
タイトルからは、何も想像出来なかった。
唐突に、脱ぎ散らかされた衣類や靴を着ながらと、スクリーンに映し出された言葉や(爆)の文字。展開が理解出来ぬまま、ストーリーは続く。
「新キャラです」と呟きながら、“カミチカ”として登場。少し会場から笑いがおこって。
ここまで来ても、何を表現したいのか、まだ解らない。
女子二人デモの参加。それを止めさそうとする男。
女子一人ヨコチンは男に誘惑されて、デモから外れる。
デモ、なんの?ミサイル反対?
もう一人女子トモコは、カミチカにこの世界を終わらせた後も生き延びる選択を迫る。
カミの就任式、オタ芸ダンス。
そして“ウルトラ・スーパー・ミサイル”がカミチカの手で発射され、世界が終わる。
のちに、生き延びた者たちにより、また世界を創り出す。
ラストでまた舞台を始まる前の状態に戻した(衣類や靴を脱ぎ散らかした状態)
と、私は書きながら、作品を思い出していくと何か掴めるかと思いましたが、やはりそれ以上のモノは出て来なかった。
「人類が何億年もこのサイクルを繰り返しているのだ」と言っているのだろうか。それにしては、深さと広がりが無さ過ぎる。
残念ながら、観ていて彼等の伝へたいモノが理解出来なかった。
申し訳ない。
B block1
Name ヲサガリ
Title ヲサガリの卒業制作
レビュー
アイドル“リョウチン推し”のオフ会。
折角のオフ会が、リョウチンの卒業オフ会になってしまったという、“んなことある?”って、なんか悲しいけど“あるある”の設定が親しみを感じる。
ひとりひとりのキャラ設定、しっかりしていた。出来れば、もっと単純に判りやすい友人同士の繋がりの表現法が欲しかったかな?折角の設定が伝わり難いと思いました。
アイドルオタクの世界って全く解らなかったけど、時間やお金を費やしても夢中になれる思いを、少し理解出来た事が、観てて嬉しかった。
「負け惜しみCongratulations♫」のオタ芸、ジャグリングやバク転などのシーンは、楽しかった!
それと、なんと言っても、言葉でLINEを表現するシーンは本当に凄かった!
今は映像でメールなどを表現するシーンは結構あるけど、舞台でしかもスタンプや画像を表現するのは新しい!このシーンはもう一度観たいと思いました。拍手。
B bloc2
Name 喜劇のヒロイン
Title べっぴんさん、一億飛ばして
レビュー
これは、最初から面白かった。
妹シマの笑い声は最高でしたね。
アメリカに留学中の姉かおりの元に送られて来た家族写真から、事件は始まった。弟ダイゴロウが別人になっている設定は、起こりとしては面白い。
ダイゴロウが何故、どこですり替わったのか、なぜ母や妹は気付かないのか、面白すぎて釘付けになりました。
コンビニ店員や、作家になってるダイゴロウ。謎が増す。
さらにスケベな探偵がまんまとお父さんになってるし、時々登場するかおりの恋人のアメリカ人。出番の空きで入れ代わりしてこなしてたところもアイデアですね。1名役者を増やすより、全然良いです。
ポチがタマに変わった時は、ポチに同情心さえ湧き悲しくなりました。
ラストの終い方も、完全に夢では無く、曖昧に終わらせた感じが私は好きです。
ところで、ダイゴロウ、本当はどっち?
B block3
Name 砂漠の黒ネコ企画
Title ぼくら、また、屋根のない中庭で
レビュー
胸に草花をあしらえてる男
片足に草花をあしらえてる男
両目に草花をあしらえてる女
その草花のあしらえてる場所に欠陥があるというのであろう。
衣装の表現法は目を引きました。常にそこに心の眼が向いていると感じられて、ストーリーが理解し易い。
三人ともとても演技力があると思いました。特に足の悪い男の方の見えてるものが、自分にも見えて、舞台に立ってるような感じさえしました。
彼等にとってメダルとは、過去の栄光。
何でも治してくれる先生に会える中庭は、唯一安堵できる場所。
でも、そこから一歩踏み出す勇気は無い。
しかも、両目を治してもらった女は気がふれてしまった。
足の悪さも現実逃避の理由にしているのか。
しかし、一番恐くて危険なのは、見た目では解らない心を病んでるモノだと、改めて感じさせられた作品でした。
そして、欲を言えば、もっと深く闇を掘り下げ、アイデアにて意外性のある作品に繋げていける作品ではないかと思いました。