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企画

審査員講評 渡辺えり 氏

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今回審査員として初めて参加させていただきました。どれも似た作品がなくそれぞれが独自に進化した感のある舞台に触れることができ、刺激的な二日間でした。

 

A‐1 fooork『ユニアデス』

意図もテーマもはっきりしていて分かりやすいが、それだからこそ、もっと繊細に演出を工夫しなくてはならなかったと思う。全体が一本調子になってしまい、最初からラストが想像できてしまう。もったいなかった。

 

A‐2 stereotype『感染性ピエロ』

面白く観劇した。台詞も面白く独特なユーモアがある。しかし、役者たちの訓練がもっと必要であろう。そしてもっと思い切って破天荒な演技やさらなる過激な場面展開をしていって欲しい。「男子」という世界のいびつさを描きたいのは理解できるが、それならそれをもっと追及していただきたい。

 

A‐3 劇団しろちゃん『ネクタイとスイカ割り』

戯曲は分かりやすくテーマもはっきりしている。個性的とは言えないが、役者陣の演技がそれぞれに見事だった。相手の台詞をきちんと聞いて相手に受け渡すという会話のキャッチボールが一番良くできていた。主人公の女性の優柔不断な心情なども良く表現していた。全員が活躍できる好感の持てる作品となっていた。

 

B‐1 楽一楽座『LIVED』

非常に面白かった。役者の活躍が凄かった。そのリアリティーが他を凌駕した。舞台セットも短時間のセッティングで良く飾り付けたと感心した。骨をむき出しにした人形に着せた衣裳も面白い。人形の足元に電気が付く演出も面白い、そしてそれをすべて一人の役者が操作しながら絶叫する演出が切ない。昔観たロッキーホラーショーの劇中劇のシーンを思わせる。またブロードウェイでヒットした「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」のパロディーのようにも思えたが本人に確認したら「観てもいないし知らない」とのことであった。このまれに見る奇才に感心した。

 

B‐2 ゆり子。『あ、東京。』

戯曲はとても面白かった。ゴジラのような東京怪獣が京都まで侵略してくる発想も面白い。キッチュな感覚と日常のリアルさと、残酷な人間関係のパラドクス。センスの際立つ作風である。しかし、この作品のテーマの真意は京都の人にしか理解不能ではないか?東北山形の出身の私にとっては、関西の都市自体が地方とは思えない。未だに汲み取り式トイレの学校や公民館の多い東北の街や村。震災の後、いつまでも復興しない福島や岩手の村に立つと、東京と関西の戦いがパロディーにしても入り込めない。だからなのか、母親の存在と娘の関係、その恋人の関係にも今ひとつ入り込めなかった。しかし、この作家は筆力のある作家だと思う。今後を大いに期待したい。

 

C‐1ミチタ カコ『夏の続きは終わらない休み、雨の音は聞こえている』

動きが練れていて、舞台美術も照明も洗練されていたが、人物がすべて似て見えたことが残念だった。発声も声質もわざと同じように演出したのかも知れないが、せっかく女性が何人も出演しているので、個性を発揮できるような演出を期待したい。役者も役の工夫をもっとした方が良いように思った。死者と生者の衣裳を白と黒で分かりやすく区別したのかも知れないが、多摩美ということで、私の方が期待し過ぎてしまった。衣裳デザインももっと凝れたはずだし、想像力を駆使して欲しいと感じた。

 

C‐2 でいどり。『夕暮れの公園、静寂を忘れて。』

狂気とエゴイズムの狂騒といった感じの面白い作品だった。女性の役者の声が良い。そして衣裳のセンスも優れていた。昔教室で演じたようなアンタークランドの香りのする舞台。しかし、二人の人物の交流が欲しい。会話が欲しい。二人だけの登場人物が独白し続ける意味が感じ取れなかった。残酷で切ない物語のはずである。

 

C‐3 劇団バッカスの水族館『結婚したら両目を瞑れ』

テーマがはっきりしていて良く書けている戯曲だと思った。登場人物が突然コロスに変化する演出も面白い。役者たちの演技もめりはりがある。しかし、家族の描き方がステレオタイプで感情が分かりにくい。苦しみ悩みをわざと抑える演技に徹したのかも知れないがもっと奥行きが欲しい。

 

 

 

 審査となると上から目線の書き方になってしまうが、私も皆さんのやむにやまれぬ演劇熱を取り入れ、また一生懸命芝居を作って行きます。お互いにコツコツと頑張って行きましょう。