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企画

観劇レビュー ヘロタジョさん

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三重県・愛知県 ヘロタジョさん(しまい倶楽部)

 

ポケット企画のレビュー

 

 視覚的にも聴覚的にも魅了させられる作品。〈生〉特有のパワーを無理に押し出さず映像作品としても成立させられる完成度の高さと同時に、その場でのみ生み出される〈生〉のパワーをピアノの伴奏で上手く引き上げていたところが好印象。視覚的には画材や小道具を単純な美術に加えて心理表現などを、聴覚的にはピアノの生演奏で役者や状況と無理なくリンクさせていた。ただ世界観に丁寧になっているが故に壊すことに抵抗を抱いているように感じた。今一つ物足りなく、もう一工夫することも出来たような気もする。雰囲気としてこの団体独自の空気が完全に形成されていてブレが無く、何より美しい。世界観が安定はしているが法則に則ったものというものが感じられ、段取り感が度々見える。画材の配置や話題の出し方などでその「行為」が前提にあるような演劇的な意味での準備の良さが見えてしまったように思える(黒紙は何故最初から敷いてあるのか、臍の話題 など)。
 ここから個人的な雑感で、作中で印象に残ったのが足跡の作品。黒紙に自らの足跡をペンキで残していき、その真ん中にのみ空白を残し自分たちがいたということをアピールする。タイトルにもある『ここにいて、』を文字通り象徴するが、我々はその過程を見ているからこそその作品の真意をある程度理解できる。しかし作品という結果だけを見て「なんじゃこりゃ!」と一蹴する者やチラリと見るだけの者が全てなのだろう。それにも関わらず過程としての足跡を残すことが重要であるというスタンスのこの作品はカクカクシカジカやソンナコンナを言い表せない我々への応援歌なのではないかと思えた。見る側に対しても産んだものとして存在意義を訴えていた。作る側も見る側も自分に向き合うだけで精いっぱいのこんな時代だからこその優しい題材だった。