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レビュー

観劇レポート 小原藍さん

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第2回全国学生演劇祭の演目を観劇し、舞台の模様を広く伝える”劇評/レビュー”を書いていただく方を募集し6名の方に担当していただきました。

 

小原藍さん

京都造形芸術大学 映画学科 入学予定

私は高校時代三年間、高校演劇をやっていました。その中で、学生演劇をやっている大学生に出会い、様々な事を学びました。全国学生演劇大会のレポーターをしようと思ったのは、京都のみならず、全国で演劇を盛り上げようとしている現在のシーンを把握したかったからです。

拙い文章ですが、最後まで読んで頂ければ幸いです。

 

 

Cブロック

  • 劇団マシカク「自憂空間」

徳島からの参加。

「ニート達の日常と、その脱却。」

人数も少ない中、テンポ良く飽きずに見る事ができた。どちらかといえば、コントに近かった印象。パロディなど、笑いに意欲的である事を高く評価したい。しかし、その笑いが、必然的な笑いではなく、あくまで突発的な笑いである所が少し残念。物語に広がりを持たせるような笑いが欲しかった。役者陣も、癖の強さが気になるが、個性もあり一挙一動が良く考えられていた。しかし、そのアクションが予定調和に見えてしまう事に、意識的になってほしい。

風船の舞台装置などは工夫が感じられた。

尖ってばかりというが、まったく尖っていない。

 

  • 岡山大学演劇部「山田次郎物語」

岡山からの参加。

「山田次郎による、山田の物語」

素舞台を、ほとんど役者だけで構成する演出は挑戦的でありとても素敵だと思った。

物語も、ありふれてはいるが暖かく心穏やかに見る事ができた。しかしその反面、物語にメリハリが少なく少し眠たくなってしまった。地味であるからこそ、細かい起点(感情面、技術的にも)が必要となるのだが、そこが平坦に感じてしまったのが残念。また、歩くルートや喫茶店でのコーヒーを乗せる手の高さが左右違う事など、細かいところの詰めの甘さが気になった。

音響なども、この物語なら歌詞などが無いものの方が情報の整理がしやすい。

この物語を見た際、柴幸男の「あゆみ」をどうしても思い出してしまう。また世代が変わり、物語が続いていく構造であるなら、リフレインなど一番この物語で核となる場面を印象付ける演出がほしい。パワーでどうにかできないいちばんどうでもいい物語だからこそ、最も作り込みが必要であったのでは無いか。

 

  • 幻灯劇場「DADA」

京都からの参加。

「コインロッカーから生まれた命達の、恋と愛と欲望にまみれたコインロックミュージカル」

他団体の追随を許さず、圧倒的であった。

衣装、演出、作曲、群舞、戯曲、どれをとっても挑戦的であり、刺激的。

作、演の藤井氏の詩的でありつつも、自分の内面ばかりに内向きにならず、無駄の無い台本が

秀悦。役者も、キャラ付け以外にも、会話のテンポ感などで関係性がしっかり観客に情報として入ってくる。ミュージカル、という事で騒がしい刺激的でカオスな癖が強い物語ではあるが、情報の取捨選択がしっかりとなされている為、とても見やすく三作品で唯一、安心して物語を観ることができた。

終盤の展開のみ、少し乱暴だったように感じたので、ラストに向けてもう少し物語の中での観客の誘導が丁寧になるとより見やすくなりそう。

幻灯劇場並びに、作演出・藤井颯太郎氏の今後に期待したい。

 

  • 総評

結構、好き勝手言った感がありますが、全て正直な感想です。まぁ、女子高生の戯言なので無視していただいても全然構わないし対して役に立ちもしないです。

私は、自らが演劇をやってきているので、全ての作品にそれ相応の時間と労力がかかる事は、

理解しております。だからこそ、評価に値しない作品など無いと思うし、どの作品も強いリスペクトを持って評価させて頂きました。

結局、学生演劇という枠は超えられないのだろうか、と感じつつ、いや、これから皆で盛り上げようや!と強い活力を頂きました。

今後の皆さんの演劇活動、楽しみにしております。