JSTF

レビュー

東北連合へ参加団体からの感想・講評

冒頭ラジオからのシーンの切り替え「なにかある予感」に期待が高まる。予期せぬ訪問者 から始まり、一人ラジオという奇抜さや双極的なキャラクター、よめない展開が面白い。時 折見せるアドリブにも危うさがなく、二人がそこにいるような“ライブ感“に好感を持てた。 僕がさらに感心したのはラストシーン。冒頭のリフレインは演劇ではよくあることだけど、 変に盛り上げることもなく、ただその人物の生活が淡々と進んでいた。しかし、そこにはわずかな心情の変化があり、パーソナリティ(人格)が少しずつ変わっていくのだろうなとい う予感があった。

■ポケット企画 サンペイリュウタ

 

まず、自室で1人ラジオを録音している根暗大学生が、陽キャ大学生とラジオをするという設定が秀逸だと感じました。大学生の方が脚本を書かれているからなのか、些細な小話にも共感できる部分が多くてひき込まれました。 

さらに、役者さんがお二人とも発声や滑舌が良くて、セリフがとても聞き取りやすかったです。特に今回は映像を通してなので、お芝居を伝えることがさらに難しかったと思うのですが、最後まで 飽きることなく観続けることができました。 

あとこれは私自身も日頃演出をする際に苦戦する点なのですが、セリフ自体が日常会話ベー スなので、役者さんの演技により自然な会話感があるとなお魅力的になるかと思いました。

■ごじゃりまる。 演出助手

 

それぞれ別のコミュニティに属する2人のすれ違いを、会話のテンポや表情で上手く表現していて良かったです。主人公が相手に直接言わず、ラジオで感情を吐露しているというのも切なく、リアリティを感じました。また、狭い部屋に男性2人が入って話をしているという図も、視覚的に面白かったです。

主人公の変化が劇中で特に感じられなかった点で少し物足りなさを感じましたが、演劇にありがちな「物語の中で変化・成長する主人公」という構図にとらわれておらず、新鮮に感じました。

■劇団Noble 助演出

 

男子大学生二人の微妙な心の揺れ動きが非常に鋭くかつ繊細に描かれていました。二人とも嫌いになれない良い奴なんだけど上手くいかない感じがもどかしい、そんな劇的ではないけれど確かにリアルな部分を切り取っていたところがとても好きです。

長谷川が電話している間部屋に一人残されている山瀬の、何も喋らずにじっと座っている姿に胸が締めつけられました。すぐにスマホに手を伸ばさずにドアを見つめたり水を飲んだりしながら待っている様子が、山瀬がいかにラジオを大切にしているかが伝わってきました。

楽しかったのに素直になれない絶妙な心情を丁寧に描いた素敵な作品でした。

■ゆとりユーティリティ

 

私自身、明るくないキャラクターなので見ていて胸が痛かった。

陰キャ殺し。

■あたらよ 関係者

共通の好きなモノを通して会話している。一見は盛り上がっているはずなのに互いの間に漂うなんとも言えない気持ちの悪い雰囲気がとてもリアルでした。

そうなってしまうのは2人の他人に対する度量の違いが原因で、その違いを目の当たりにしてしまうのが残酷だな…なんて思いました。

■あたらよ 関係者

 

一夜限りの相方に抱いた好意とルサンチマンのせめぎ合いや小さな空間が素直に心に馴染み、観客との距離をぐっと親密にさせる上手い作品だと感じました。部屋の闇の溶け込む主人公と白い服が光を集める相方の色彩的な対比を美しいと思ってしまいました。また、ラジオは演劇とこんなにも親和性が高いのだなと思いました。人間の心の中が照らし出されるラジオというツールを通すことでリアリティが壊されることなく、良質な短編映画を観ている気持ちにもさせられました。

■ふしこ 役者

 

リアルな空間、音響、お芝居で自然と入り込めました。

最初に長谷川さんが山瀬さんの部屋に上がり込んだ時、2人の座る位置が向かい合うのではなく奥側と上手側なのが嘘っぽくなくていいなと思いましたが、長谷川さんの表情が見えづらくもったいないと感じてしまいました。

話が合って、自然とタメ口になっていく様子などがとてもリアルで微笑ましかったです。趣味が合うはずなのに受け入れられない部分があったり、仲良くなれたかもしれないのに何もなく終わっていく様子に、寂しいけど現実でよくあることだなと感じました。

リアルな空間でとても心地よく観ることができましたが、起承転結の転と結の部分が分かりにくく、結局何だったんだろう?と思ってしまいました。このありがちな日常からどんな展開が待ち受けているのだろうと期待していたので、少し物足りなく感じてしまいました。

■おちゃめインパクト 役者 久保